学校図解化計画

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 こんにちは。学校提案資料の90%は、最後まで読まれてないと確信しているAPETです。

 さて、今回は「学校の授業や資料、会議に図解を取り入れよう」という趣旨の記事になります。前回は「図で考える習慣」という本を参考に、図解のメリットと概念図のポイントを示しました。

 そして今回は、概念図の進化系にあたる構成図と呼ばれる図を4つ、学校事例を取り上げながら紹介します。

 学校事例を取り入れている理由は、巷の図解書はビジネスの事例ばかりで、学校に応用するのは大変だなと思っていたからです。

 今の時代は、学校においても、人に動いてもらうための分かりやすさや、業務の効率化が求められます。そのために、図解はとても大きな力を発揮してくれるので、学校バージョンの図解書になればと思い記事化しました。

 最終的には、学校にバンバン図解が持ち込まれ、誰にとっても分かりやすい提案や資料があふれて、業務効率化や教育の成果につながれば良いなと思います。

 では、これから「ピラミッド」「田の字」「矢バネ」「ループ」4つの型を紹介していきます。早速まいりましょう。

ピラミッド

 ピラミッドは最頻出の型ですので、飲み会で言えば「とりあえずビール」的な扱いをされますね。図解化へのフットワークが軽いので、これ自体は良いことです。

 ただし、包丁は食材を切り、調理しやすくするための道具であるように、ピラミッドも目的に合わせて使用した方が効率が良いですよね。

 ピラミッドを使う目的とは「物事を網羅、分解し、正しい理解に到達する」ためです。この目的に合致した使用場面を知った上で、武器として正しいチョイスができる精度を高めましょう。

使用場面

視点や思考範囲の拡大

 問題を1つ目の枠に書き、次に四角の空枠を3〜5個描くことで、穴埋め問題を解くぞ的な強制思考モードに入れます。すると、違う視点や、考えが至らなかった範囲に思いを巡らせられます。

 正解が思考の範囲外にある可能性を考慮すると、正しい理解にたどり着ける可能性が高まると言えます。

 例えば、どの学校も行っているだろう遅刻者減少の対策を考えます。

 よくあるのは、下図のように、遅刻した子の叱責に集中してしまうパターンです。

 けれども、遅刻をなくすという目的達成のためには、その場で注意するだけでいいのでしょうか?ここで、視点を広げてみると、遅刻する前と注意後のフォローという別の切り口からの指導も重要ですよね。

 これをピラミッドに描くと、こうなります。

 このケースでは、3つの空枠を前・中・後という時間軸上に整理しました。この整理をすると、遅刻時の注意以外のタイミングにある働きかけや対策を考えようという、これまでは持てなかった視点を増やせます。

複雑なコトを分解したい

 次は、テーマが抽象的で、雲を掴むようなモヤッと感を抱く際に、いくつかの具体的な塊に切り分ける時に使います。

 すると、いざ分解すると、それまでは対応できない問題だったものが、案外ワンポイントの対策で解決できるかもしれない、とクリアに見えることがあります。

 1人では食べ切れないホールケーキを、カットケーキにするがごとく、複雑な全体をシンプルな部分というサイズに変えるのです。

 先程と同じく、遅刻生徒について考えてます。一概に「遅刻者」と言っても、様々な属性や特徴があるはずです。女子に多いとか、高学年に多い、などのグループです。

 遅刻者という大きい括りを細分化することで、各グループにマッチした対策が打てます。

 例えば指導効果として、「男子には数値目標の掲示が良い」「女子には対話で原因を探ると良い」という指導法が確立していたとします。

 しかし、図のように遅刻の多いグループが女子であるという分析をせず、教室に掲示物ばかり貼っていても遅刻対策としてのインパクトは小さいですよね。

 このように、問題の対象を小さく分解して考えたい場面に、ピラミッドの効果は抜群なのです。

問題を深堀りして理由を突き止めたい

 最後は深堀りです。問題に対し「なぜ?」や「本当か?」と突き詰め、ピラミッドの層を深くすると、時間や空間を越えた非連続な理由が見つかることがあります。

 例えば、クラスに落ち込んでいる生徒がいたとします。かなり無理やりですが、その原因の深堀りを図解します。

 原因は本人自身にあると思っていたが、ここに「本当か?」と疑いをかけると、実は本人自身が原因ではなく、友人とのケンカが原因かもという推測を立てることが可能です。

 原因を生徒本人にフォーカスせず、友人や家族という周辺に幅を広げる。そして、広げたところから「なぜ?」と思考を深め、真因に辿り着こうとしています。

 架空事例ではありますが、原因が”今”の”本人”という連続的なものでなく、”過去”の”ケンカ”という非連続的なところに見えてきます。

 このように、「本当か?」「なぜ?」を繰り返すことで、目の前の事象と地続きでない離れた原因への到達可能性が高まっています。

 とっさに閃いた数少ない答えを正解であると固執してしまい、実は的外れで失敗する経験が多い人には、ピラミッドの深堀りによる真因探索の効果は高いと思います。

ピラミッドまとめ

ピラミッドは、物事を網羅、分解し、正しい理解に近づくための図

使用場面には ①範囲拡大 ②分解 ③深堀り の3つがある。

田の字

 次に、田の字です。マトリクスと言われたり、数学の4象限を思い出す方もいると思います。

 田の字の特徴を一言でいうと「本質を切り取り整理する」ことです。この場合の本質は、欠いてしまうと成り立たない大切なもの、くらいの理解で進めます。

 前記事で図解のメリットの一つに、大切なことしか描けないことを挙げましたが、まさにこれです。

 田の字の外枠を問題や思考の全体として見た時に、4つに区切られた各スペースに重要なことを描くのです。すると、複数に跨る複雑な要素(時間、重要度、人の属性など)を2次元で示し、単純化した整理ができるのです。

 人は複雑なことは考えられません。シンプルに2次元までが限界です。そして重要なことは、この全体を捉える2軸の選び方にあります。

 ここでずれた軸をとると、砂の積み木を積み上げるようなもので、一向に完成しない建物になってしまいます。そこで田の字では、3つの軸の選び方と、それぞれに学校事例を当てはめて紹介します。

軸の選び方

 最初に言っておくと、軸選びは本当に重要なのですが、1発できれいにハマるなんてことは少なく、とっかえひっかえしながらハマっていくことが多いです。

 1、2回やってみて上手にいかなくても、これから挙げる3パターンを試しながら、何度もチャレンジしてみてください。

対立

 相反する軸をとり、かけ合わせることで全体を作ります。

 例えば、授業の質を考えます。これを整理するために、話す時間について、教師✕生徒の2軸としてみましょう。

 一般的に、生徒の話す時間が長く、教師はあまり話さずサポートする位の授業が、授業の質は高いと言えそうですよね。

 この考えで田の字を整理すると、4つの属性にネーミングができそうです。

 

 こうすると、授業の質を高める、重要な要素が誰の目にも明らかな形で示せます。

要素分解

 次の要素分解は、進路選択の例を挙げながら説明します。

 進路選択の要因として、大きい位置を占めるものは「気持ち」です。

 その気持ちにしても、生徒本人と親がそれぞれに持っているものですから、ここを2つに分解できそうだとなる訳です。さらに、気持ちは「積極的」と「消極的」がありそうだぞと考えます。

 ですので、今回は「生徒の希望/親の希望」という軸に、「行きたい/行きたくない」の両面を加えて整理してみましょう。

 実際、人生の選択でもある進路選択の時期になると、生徒と保護者の意向が合わず言い争いになる場面もありますよね。感情的になっている現状を客観的に捉え、気持ちの位置関係を整理するための道具として使えるかもしれません。

因果関係

 最後に、因果関係です。「◯◯すると、✕✕になる」の、◯◯と✕✕を軸にします。

 遅刻数と成績の因果関係を示してみましょう。一般的に考えれば、遅刻が減ると、授業出席時間が増え、成績が上がると考えると思います。

 感覚的には当然のように思えますが、関係性をあえて可視化してみます。

 すると面白いことに、遅刻数の少なさと、成績の良さの間には明確に相関関係がありそうだ、という図が出来上がります。もっと言うと、赤丸で囲えるグループには対策が必要だということまで浮かび上がります。

 余談ですが、実際に作ってみたところ、関係性把握の目的とはずれますが、「遅刻防止啓発用のポスターに使えるかもなぁ」と考えてしまいました。

 分析図の要素も含むので、手間がかかるかもしれませんが、実際のデータをプロットしてみると面白い関係が見えてくるかもしれません。

 さらに、データを分析して気付くことの1つに、関係性から漏れているハズレ値に注目することもできます。

 この図のように「遅刻は0だけど、成績が1だらけの生徒がいるから、別のフォローが必要かも。」のように、因果関係外の特異点を認知できれば、さらに使いみちが増えますよね。

田の字まとめ 

田の字は、枠内に本質を描き整理するための図。

軸のとり方は、①対立 ②要素分解 ③因果 の3つがある。   

矢バネ

 個人的には、大本命の矢バネです。

 これは、始まりと終わりが決まっている行動や時間の流れを全体とみなし、その一部分を切りとって表現する方法です。

 学校で挙げるとすれば、レポート課題の一連の流れがしっくりくるのではないでしょうか。

 レポートは先生から配布され、生徒が各自実施して、提出する。その後、先生が採点し、生徒に返却される。ここから動きの中でのポイントを抜き出す感じです。

 ようするに、本来は動いているシステムを、重要なポイントで一時停止し、矢印として描くのが矢バネなのです。

矢バネ作成ポイント

 矢バネを作る際のポイントは、意味ある塊を4〜5個に絞ることです。

 レポートの例では5つでしたが、これが少ないと動きが見えません。「配布→返却」では途中で起きる重要な要素を捉えきれていません。

 逆に、多いと複雑さを極めます。「テーマの募集→テーマの決定→配布→中間確認→・・・・」となると、重要でない要素が含まれてしまい本質を見逃してしまいます。

 ですので、意味がある大切な塊を切り取る思考が求められます。

 次に、システムごとの例を1つずつ挙げましょう。

時間のシステム

 1時間の授業を、時間が流れるシステムの一つと考えれば

 

 このように表せます。

行動のシステム

 行動システムとして、論理的な説明方法を考えれば

 

 このように表せます。

 学校現場では、〆切や時間割、学年進行などの時系システムの使用頻度が高いと思うので、登場シーンも自ずと増えるでしょう。

 ここで、作業効率化や効果上昇のためのTipsとして、頭の片隅に置いてほしいことがあります。それは、矢バネの消去と統合です。

 直線的な動きを矢バネで示してみると、この作業は非効率だな、とか効果が薄いかもと思える箇所が見えてくることがあります。

 こうなると、図に仕事の無駄が表面化し、その部分に修正を加えることができます。そこで、矢バネの消去や前後統合を施すと、仕事全体としての生産性向上につながるのです。

軸の組み合わせ

 さらに深い意味合いをもたせるには、軸を組み合わせることが必要です。

 例えば、ビジネスにおいて、消費行動を表すフレームワークのAIDA(アイダ)というものを転用してみます。AIDAとは、Attention(認知)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Action(行動)の頭文字を並べたフレームです。

 これを、清掃ボランティア獲得のための募集ポスターに適用してみましょう。

 AAの矢バネを横軸に、縦軸に全生徒数から志願に至った生徒数の推移としておいてみます。

 生徒数の明確な数値を示さなくても、志願までに脱落しているおおよその数が感覚的に分かる図になっていると思います。

 ここから、より認知を獲得できそうな場所や方法の検討や、アンケートを記憶していた生徒数を把握するなどの活用法が生まれてきます。

 他の例でいうと、遅刻指導において、行動のシステムを縦軸に、分掌の役割を横軸にとり、行動手順と各所の連携を示す俯瞰図が描けます。

矢バネまとめ 

 矢バネは、動的システムの一部を切り取り、全体を静的に表現するための図。

 縦横に別軸をとれば、システム内の因果や関係性を表す一枚絵になる。

ループ

 最後にループ図の紹介です。

 部分にフォーカスを当てて分析してきた、これまでの3つの図とは趣向が異なります。言うなれば、ループ図は遠い視点から有機的な「つながり」を洞察するための図です。

 システムをより全体的に観察し、作用がはたらく関係性をつなぎ、組み上がった構造を考えていきます。

 そのため学校で言えば、管理職や分掌主任のような比較的上層の役職の方に実践していただきたいです。なぜなら、人間関係やビジョンとタスクの関係性などの全体最適を考えることが、マネジメント側の人たちの役割だからです。

真理は「間」にある

 ループ図の秘訣とは何かを著者の言葉を借りて紹介します。

 それは、真理は「間」にある、です。

 イメージしづらいので例を挙げると、人のモチベーションが高まるには、何がしかの外的要因があります。「モテたいからダイエット頑張る」とか「外車に乗りたいから副業頑張る」のような感じです。

 前者なら、気を惹きたい他者の存在との関係、後者なら、車という商品との関係が影響しています。

 要は、人と人、人と物の間にある矢印に、感情が発生しているのです。

 この感情を呼び起こす接点が教育や商売などにおいても、重要な位置づけにあるのではないでしょうか。

生徒の成長をループ図に

 ループについては、以下の1例の紹介にとどめます。というか、これしか出てきませんでした。

 学校において、最重要な成果とも言える「生徒の成長」を学校システムの中で表現してみます。

 ここから分かることは、生徒が成長をする場面は、深い思考と自信を感じる瞬間である。そしてそれを支えるのは、教師の授業の質であり、良質な問いから始まるということ。

 このサイクルが回る限り、生徒と教師が相互強化のループ関係となり、成長をし続ける好循環が生まれることを示しています。

ループ図まとめ

ループ図は、システムを俯瞰的に眺め、物事同士のつながりを見出すための図。

ゼロサムではなく、強化型の循環を見出すことが大切。

最後に

 学校現場では、受け取り手ファーストではない文字だらけの資料や、会議の議論プロセスを各自の想像に委ねるなどの非効率な仕事が多いと感じています。

 私自身、授業の説明や生徒から受ける相談、同僚との会話でさえも、一旦はすべてを図解に置き換えようと考えています。その効果かは定かではありませんが、事実として、資料や説明が分かりやすいと言っていただけることも増えました。

 ぜひこの記事を参考にしていただき、「授業の説明に図解」「資料は図解でスッキリ」「会議も図解でプロセス共有」と、学校に図解ブームを持ち込んでください。

 まずは1枚の紙とペンを持ち「手を動かす」こと。

 学校現場の仕事クオリティの向上と、効率化によって「できなかったことができる」につながれば嬉しいです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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