こんにちは。教員研修でコンサルの思考法を取り入れたら、長期的には指導力が爆上がりすると思っているAPETです。
今回は、経営戦略を専門とする大学院教授、平井孝志さんによる著作「図で考える習慣」をもとにして記事を書きます。その上で、教育現場、とりわけ学校で図解を実践しちゃおうという記事の前半になります。
簡単に著者の紹介をすると、平井さんはこれまでに外資系コンサルや有名企業の経営部門のトップとしてご活躍されています。そして、現職は筑波大学の大学院で経営戦略やロジカルシンキングを教えている、絵に描いたようなビジネスプロです。
教育もビジネスも目的は同じ
ここだけ読むと、ビジネスと教育は対極だから関係ないんじゃない?と思う方もいると思います。ところが、関係大アリなんです。なぜなら、教育とビジネスの目標は、同じ「成長」だからです。
学校にとっての第一目標は生徒の成長ですし、企業も同じで、生き残るための成長は必須です。そういった意味で、成長を考える根底には通ずるものがあり、両者には関係があるといえるでしょう。そして本書は、その成長を支える基礎的な思考法として「図解」という手法を紹介してくれています。
前半の本記事では、図解のメリットと、ポンチ絵といわれる概念図のポイントを解説します。
概念図は三段跳びでたとえると、概念図は「ホップ」です。考えがまとまらない、関係性が見えないときなどにまず描き始め、思考を整理したり着想を得るためのツールです。ここだけでも「深く考える」ための第一歩になりますので、一見の価値があると思います。
そして後半は、構成図という「ステップ」の段階です。他の書籍やブログでの取り扱いが少ない学校事例を参考に、「学校図解化計画」と称して紹介したいと思います。
せっかくですから、これらの記事を読む前後でどう変化するか図解してみましょう。(ちなみに、このような図の書き方も本書に載っています)
また、本書は現場で働く教員にとって『ちょうどいい』レベルの図解指南書だと感じます。その理由も図解してみます。
3つの理由から成り立っていますが、これを文章で説明してみましょう。
まず1つ目の「4つの型のみ」ですが、他の図解書の場合、型が数十に上ることもざらで、引き出しの数だけ増えてしまい、肝心の引き出し方が分かりづらいです。
2つ目の「分析図がない」では、例えば「イ○ューからはじめよ」の場合、比較等の分析にも焦点があたり、複雑が故に学校実践向きではありません。かと言って、YouTubeの図解解説よりは分厚い内容になっています。
最後3つ目の「すぐできる」は、学校に100%置いてある、A4用紙1枚とペン1本を持てば始められるからです。
読んで分かる通り文章の場合、約200字。読むのに30秒、理解に30秒の計1分は必要です。一方、図解ならば、ぱっと見10秒で直感的な理解が可能です。
このように、教員にとって確実にプラスにはたらく「分かりやすく伝える」技術を過不足なく、つまり、ちょうどいいレベルで身につけることが可能です。
要は本書を網羅すれば、教員にとって手頃な強さの図解武器が手に入ります。
しかも、図解のメリットは「分かりやすく伝える」だけではなく、生産性そのものも高めてくれます。この理由を知ると、図解の魅力をより感じられると思うので紹介します。
手っ取り早く概念図を描く際のポイントだけを知りたいという方は、生産性の話しは飛ばしても大丈夫です。
図解は生産性を高める
教員に限らず働く人は、時間や人、道具などに制約がある中で、成果を出すために生産性を高める必要があります。生産性を高めるには、投下するリソースを減らすか、成果を高めるか、どちらかもしくはどちらとも改善することで達成できます。そして図解には、投下リソースの減少と成果UPのどちらにも良い影響を与える要素が詰まっているのです。
その理由を3つに厳選しましたので、挙げていきます。
本質のあぶり出し
図には大切なことしか描けません。あれもこれもと、文章を詰め込んでしまったら、黒塗り文字100%の資料ができてしまいます。傍から見ると、どこが重要なのか分かりません。しかし、これを図解しようとすると、「本当に大切なことってなんだっけ?」と一度立ち止まり考えます。
すると、重要な意味を抜き出す抽象化が行われ、要点を押さえることへ思考が向かうようになります。パンパンに膨らんだフラットファイルの中から、重要書類だけを残すと意外と薄いじゃん。という感覚に近いと思います。
要は、ゴミ情報を捨てて1枚の図に詰めるのです。より少なく、より大切なことだけを描くのが図解です。
思考範囲の拡大
企画提案時に、同僚から指摘が入り「うわ、そこは考えてなかったわー。」となった経験はありませんか?思考範囲の狭さによる、異なる視点の検討不足です。
これも図解ができると対応ができるようになります。なぜなら、強制的に違う視点を考えるモードに入るのが図解だからです。
たとえば、「生徒の成績UP」というテーマを考えたとしましょう。真っ先に頭に浮かぶのは、生徒自身の頑張りでしょう。いかに授業をきちんと受け、自主学習をするか(させるか)の一点に焦点があたり終始してしまうかもしれません。
そんなときに、紙の真ん中に「生徒の成績UP」というテーマを描く、ごく単純な図解をしてみましょう。
すると、一歩引いた視点から、生徒の成績に関する様々な観点を考えざるを得なくなるのです。これまでは生徒単独で攻めるアプローチが、「教師の授業力」や「周囲の学習環境」「保護者の協力」にまで視野を広げることができました。
つまり、狭い思考から脱却し、視野が拡大したのです。これは企画提案でも同様で、立場や年齢が異なる人の視点を事前に考えることができれば対応のしやすさは格段に上がります。
そういった意味で、図解による思考範囲の拡大は成果に直結するといえます。
論理の見える化
人は頭の中での論理は緩く破綻していることが多いです。
例えば、「高校は教育の場として大切だ」をテーマに説明してください、と言われたとします。
思い浮かぶのは、進学のための学力獲得、集団行事に参加、趣味嗜好の似た友達ができる、部活動もある、専門分野の先生に教われる、インターンや社会体験活動ができる、、、、と様々な要素が出てくると思います。
一方で、このように考えを羅列するだけでは、各項目の粒の大きさが不揃いであったたり、抜けや重複が出ます。すると、関係性に齟齬が生じ、論理の整合性や一貫性が失われ、支離滅裂な説明になることがあります。(私はコレを羅列型説明と呼び、自身が最も犯しがちな失敗です。)
ここで、中心にテーマを描き、空白を残した図解をしてみましょう。
この図の中に、つながりが見えてこないでしょうか?
友達や先生は「出会い」というグループで囲めるな。それに、友人と部活は「コミュニケーション」。学力と体験活動は「進路選択拡大」にまとめられるかも。
こんな風に、具体的な項目をグループとして抽象化し、線で囲んで可視化することで、重複により間延びしていた論理をロジカルに整理することができます。
現に、この図があれば、「高校は大切な教育の場です。理由は3つあります。1つ目は出会い、2つ目はコミュニケーション、3つ目は進路選択の拡大です。例えば、出会いで言えば・・・」のように、結論→理由→具体例の論理構造が生まれていることが目に見えて分かります。
このように、思考を書き出して見える化できる図解は、論理の補強や整理にはもってこいの方法なのです。
概念図〜5つのポイント〜
ただただ図解の素晴らしさを熱弁してきましたが、最後は実際に図を描くためのポイントを図解して終わりたいと思います。
簡単に図を分類しておきますが、本書では図は大きく分けると3つあると書いてあります。
概念図 ➡ 構成図 ➡ 分析図
右へ向かうに連れ、意味をなす構造が厚くなり、描画難易度も上がります。大抵の場合、概念図を描き始め、因果や対立などの関係性が段々と見え始め、次第に構成図へ移行します。ですので、概念図はホップなのですね。
現実には、いきなり構成図パターンもありますが、関係性の有無で概念図と構成図が区別できることだけは知っておきましょう。では、概念図を描く際のポイントを5つ図解で紹介します。
図形はシンプル
文字を削ぐ
線の使い方
強調
余白残し
まとめ
◆図解のメリット◆
思考整理や分かりやすい説明をするのに役立ち、成長に不可欠な生産性を高めてくれる
◆概念図のポイント◆
①図形はシンプル ②文字を削ぐ ③線の使い方 ④強調 ⑤余白残し
本記事では、まず図解の理解度を高めるという目的で、図解のメリットと概念図のポイント5選を紹介しました。
何より、実際に手を動かして「描いてみる」ことが上達の近道です。ぜひ今から紙とペンを持ち、ポイントを参考にしながら図解をしてみてください。
次回は構成図の紹介ですが、学校でよくある場面を図解していくので、大部分がオリジナルな記事になります。ご興味があればぜひご覧ください。
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