本書はターリ・シャーロットさんという、イギリスの名門ロンドン大学の認知神経科学者の著作です。
一言で言えば『相手に行動してもらうための方法が科学的にまとめてある本』です。
結論
本書の結論は「行動は”自分が”変える」です。なぜ”自分が”の部分が強調されているのか、解説していきます。
目次
1 説得の失敗パターン
2 説得の成功要因
3 行動を起こす動機
4 相手に手綱を渡すと
5 どんな情報が好まれるか
6 説得に向く状態とは
7 自分の行動も大切
8 まとめ
1 説得の失敗パターン
正論には正論で
人は確証バイアスという「自分は正しい」という先入観を持っています。
例えば、自分は詐欺には引っかからないという、根拠のない自信のようなものです。
間違いを指摘された場合、認めたくない気持ちが働き、都合のいい情報を集め、自分を正当化します。
つまり、自分の信じている正論と異なる、相手の正論はシャットアウトしてしまうのです。この行動を、反発行動もしくはブーメラン効果と言います。
こちらが正しさという刀を振りかざせば、相手も同様に刀を構えるような感じです。
このように、事実やデータなどの正論をぶつけても、人はより頑なになり行動は変えません。
一言まとめ
正論はやめよう
2 説得成功の要因
脳のシンクロが共感を生む
西部劇の鑑賞中、数人の脳波を測定する実験がありました。測定の結果、全員が同じ脳の波形を示すシーンを発見したそうです。
そのシーンとは、ドキドキ・ワクワクのような感情を掻き立てる場面でした。
この実験から「感情を揺さぶる刺激に対し、誰もが同じ反応をする」という事が分かります。
これは一体感とも言われます。ライブ会場で、自然と隣同士に共感が生まれるみたいな感覚です。
つまり、人は感情を共有できる。もっというと、感情は移すことができるのです。
「共感=脳波が似る=同じような思考」になるため、「私のやりたい」と「あなたのやりたい」がつながるのです。
一言まとめ
共感をつくろう
3 行動の動機
快を求め、苦を避ける
これは、接近と回避の法則で示される本能的な行動です。
行動後の良い変化は、行動を強化し、悪い変化は、行動を抑制する。行動分析学でも用いられる法則です。
ひとまず、ここでは「人は楽しいことは進んで行い、嫌なことはやりたがらない」ということを押さえてください。
即、いいね
本書の通り、進んで行動することをGO反応と言います。
GO反応の典型例は、SNSの投稿です。自分の投稿に「いいね」がつくと、さらに「いいね」を求め投稿する。
投稿→いいね→投稿→いいね・・・
「いいね」は快感となり、投稿という行動を起こしやすくします。
またポジティブフィードバックは、60秒以内だとより高い効果があります。これを60秒ルールと言います。
一言まとめ
「即、いいね」をしよう
4 相手に手綱を渡す
コントロールできないと嫌だ
財布が手元にないと不安になるように、人は何事も手中に収まる状態を好みます。
例えば、飛行機恐怖症の方。死亡率は車の方が高く、航空機事故率は年々減少という事実があるにも関わらず、恐怖で乗れない。
実はその理由、「自己コントロール」にあるのです。
車は自分で運転できるが、飛行機は他人である機長が操縦している。機長の体調は?スキルは?経験は?などの、自分ではコントロールできない部分が存在します。
このように、コントロール不能の状態が拘束感となり、恐怖を感じさせるのです。
選択を選び、自作を好む
人には、選択自体を報酬と感じる機能があります。自分で選んだ食べ物の方が、人に選んでもらったものよりおいしい可能性は高いですよね。
この選択により生じる思考回路は、生存戦略的にも理にかなっています。
なぜなら、獲得行動の選択が、今の満足と未来の報酬を生む価値になるためです。
このときに、脳は「選択のチャンス、ドーパミン放出」と指示を出します。結果、選択を好むようになるのです。
イケア効果
イケアの家具は、購入者が自分で組み立てるよう、完成品ではなく材料で販売しています。
この仕組みには、人は「自分で作った」ものに対し、愛着が湧き、優れていると思う作用が上手に使われています。
自分の作った料理は、人が作った料理よりおいしいと思うのと同じです。
選択肢を与えたり、自作してもらい、相手に関わってもらう。つまり、行動を変える決め手は「相手のコントロール感」なのです。
一言まとめ
手綱を渡そう
5 伝えるべき情報
暗い情報✕ 明るい情報◯
株価チャートの閲覧数調査を例に挙げます。株価上昇時は閲覧数が伸び、下落時は閲覧数が下がるというデータです。
閲覧数UPの理由は、株価が上がると財産が増え、気分が良くなると知っているからです。反対の場合は気分が悪くなるから見なくなる。
つまり、人は気分が良くなる情報を選り好みし、害する情報は無視するのです。
自分の伝えたい≠相手の知りたい
何かをしてほしいとき「これをしないと、まずいことが起きるかも」と言いがちではないですか。
気分が悪くなる情報を無視するのであれば、この伝え方で人の行動は引き出せません。なぜなら「相手の知りたい」とは真逆だからです。
相手の知りたい情報は「これをすると、良いことがありますよ」の方です。
一言まとめ
希望を感じる情報を伝えよう
6 ストレスは説得に向かない
ストレスはネガティブを引き寄せる
食うか食われるかの狩猟採集時代に、人の脳はほぼ出来上がりました。
その脳は「猛獣と対峙したら、生き延びるため全精力を注げ」と司令するプログラムとなっています。
この対峙はストレスを生み、生存に必要な情報(猛獣の動作等)を敏感に受信するようにさせます。言うなれば、危機察知アラームをONにするようなものです。
ストレスは悪い情報を集める態勢を作り出すのです。つまり、前向きな行動をとって欲しい場合はストレス状態は避けるべきなのです。
一言まとめ
笑顔でリラックスさせよう
7 人は人の影響を受ける
社会的学習
これは他人から学ぶプログラムのことで、赤ちゃんが分かりやすい例です。
赤ちゃんは机で勉強しなくても、言葉が話せたり、歩けるようになります。なぜなら、親の真似をして自ら学習するからです。
社会的学習は効率が良いため、子どもに限らず大人も自然に行っています。
人の選択には価値がある
人は無意識のうちに、他人の選んだものを選ぶ傾向にあります。
それには、ヒューリスティック(思考の近道)という思考過程が影響しています。
簡単に言えば、高評価が多い、多数決などを理由に選択してしまう、単純な思考です。
ネットレビューの★が多い方をつい選んでしまう、誰もが一度は経験があるはずです。
信じがたいですが、このように私たちは他人の選択に影響を受けているのです。
前向きな選択を見せる
人が人の影響を受けるのであれば、相手にしてもらいたい行動や選択を見せれば良いのです。
自分がポジティブな行動をすれば、相手もポジティブな行動をとるようになる。
つまり「してほしい行動を見せる」ことで影響力は高まるのです。
一言まとめ
ポジティブ行動や選択を見てもらおう
まとめ
最後に、短くまとめます。
ポジティブ行動を心がけ、一体感あるリラックス時に、見通しの明るい伝え方をしよう。
ストレスや正論は逆効果。そうすれば、自然と行動は変わっているはずです。
以上で、本書の要約を終わります。
お役に立てれば幸いです。ありがとうございました。
コメント