まず、以下の学びの地図(赤四角で囲まれた部分)をご覧ください。
「学びスタイル」は、指導要領で示される3つの方向性(※1)のうち「どのように学ぶか」を噛み砕いた図になります。指導要領によれば、その学び方とは「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)」であると言われています。
この学び方を身につけた学習者を、私なりに一言で言えば「開拓マインドで、違いを吸収し、なぜ・何を持ち続ける学習者」です。
では、指導要領をどのような視点で解釈し、地図化したかを書いていきます。
「何を学ぶか」は、卒業時のゴールや身に付けたい5本柱(図右上)が対応
「何ができるようになるか」は、活動サイクル(図左下)を回し、獲得していく3技能が対応
主体的
まず、主体という言葉を明確にするため、混同しやすい主体と自主の意味を比較します。
主体的は「自分の意志で判断し行動すること」を指し、自主的とは「自分から進んで行動すること」を指します。つまり、”意志の有無”が決定的な違いであることを押さえましょう。
では、自らの意志で行動するイメージを持つ人物は誰でしょうか。それが、冒険の主人公(勇者)です。ここから、主体的な学習者を、未知の敵や道のりへ立ち向かう勇者の姿に投影しています。
主人公に必要な力は、ゴールを見通す力、突き動かされる好奇心、仲間をつくる力の3つです。それぞれ、目的具現化力、自己推進力、巻き込む力とします。
まず、目的具現化力は宝箱(ゴール)を明確に設定する力です。例えば、授業で教師が示すねらいの咀嚼、自己目標の設定がここにあたります。
次に、自己推進力です。これは、青い矢印で示しています。興味関心から発する問いや、ゴール到達のために何をどう行うか、という姿勢がこれに該当します。
最後に、巻き込む力です。主人公一人で、新たな視点(見方・考え方)を手に入れることは困難です。フィードバックを受ける仲間、自分の考えを伝える仲間をつくることが必要です。RPGで言えば、魔法使いや戦士などの異なるスキルを持つ仲間がいることで、力をつけて物語が進むようなイメージです。
つまり「3つの力を備えた主人公」が、主体性を持つ生徒なのです。
対話的
まず対話を、以下の3つのレイヤーで考えます。
明確な区別が必要なのは、最下層は対話的学びでないということです。なぜなら、学習のゴールやねらいを示す以上、無目的的な会話では、ゴールには近づかないからです。地図上の対話とは、中間〜最上層にあたる、考えを表現し合い、課題解決に近づく過程を指しています。
この過程を充実させる道具の一例として、教科書や動画などの教材があります。教材の文字や映像情報を、経験や知識と結びつけ、新たな考えや発見が芽生えればそれも対話です。
仲間の意見や助言、教師の発問や解説などもある種の情報です。これらは言葉や文字、図などの表面化されたやり取りとなるため、実際の対話形式をとります。
地図では”活用”と”対話”で区別していますが、本質的にはレイヤー上部の対話という解釈です。
要するに、対話的な授業とは「明確な目的を共有した上での思考の伝え合い」であり、無目的な会話ではないということです。
深い学び
ここでは深い学びの逆、”浅い学び”を基点にして考えます。「浅い学び」とは、狭く表面的かつ点で捉える学びです。
例えば、1185年に鎌倉幕府が誕生。のような年号と出来事の暗記です。これを学びというと、非常に浅い感じがしますよね。
では、これを深い学びにしていくためには、どうすればよいでしょうか。それは浅さの逆をいくのです。つまり「広く深層的かつ線」で捉えた学びが、ここでいう深い学びとなります。広さとは、時間軸。深層的とは、疑問軸。線とは、点と点の結びつきです。
同様に、鎌倉幕府誕生を例にします。
時間軸は、ヨコに流れる時代を追う学びです。幕府誕生以前。源平合戦初期は、平氏が実権を握っていた。その後、平清盛が病死。最終的に源頼朝が壇ノ浦の戦いで平氏を滅ぼし、鎌倉に幕府が誕生する。このような時系列から広げていく学びです。
疑問軸は、WHY,WHAT,HOWなどの疑問詞による深堀りです。”なぜ”平氏が実権を握れていたのか?壇ノ浦は、”どのような”戦いになったのか?幕府の功績は”何”だったのか?このように、疑問を拡張していくと、学びが無限に湧き出てくるのです。
点と点のつながりは、情報同士がつながり知識となる過程を指します。例えば、「御恩と奉公」という言葉(つまり、点)だけを知っていたとします。ここに「幕府の功績として、封建体制を敷く」という史実(これも、点)をつなぎ合わせます。すると、点同士が結びつき「幕府はピラミッド型支配システムを構築した」という”線”としての知識となります。
最後に、他教科にも転用できるようにまとめます。
深い学びの共通点は「ヨコ(時間)とタテ(深堀り)の広がりによる、バラけた情報のリンク」です。
まとめ
勘違いが起こりやすい点として、アクティブ・ラーニング=グループワークなどの授業手法ではありません。
仮に1人の作業だとしても。自分の目的を持ち、教科書と対話し、ヨコ・タテに疑問を広げ学んでいたら、それは既にアクティブな学びの過程を歩んでいます。ですから、「アクティブ・ラーニングの視点からの”学習過程”の改善」と言われているのです。
結論、学びサイクルとは「主人公同士が、思考を伝え合い、疑問を生み出し続ける授業プロセスの繰り返し」です。
そして今の教師は、このサイクルを偶発的でなく必然的に引き出す授業のデザイン力が求められています。
以上、「どのように学ぶか〜主体的・対話的で深い学び〜」について、自作の学びの地図をもとに、解釈を加えて説明しました。先生方の授業デザインのお役に立てれば幸いです。
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